【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
まるで公開処刑を目前にするような気持ちであった。
船から見ていたものも。
ゆっくりと接近してくる鮫を前にしている重も。
ここからでは、重に弾が当たる恐れがあり
石火矢も火縄銃も使えない。
もう術がなかった。
「―頼むっ!離せ…っ!離してくれっ」
弟分達に羽交い締めにされていた舳丸が必死に叫んでいる。
その手には刃刺が握られていた。
「舳丸の兄貴ぃ…っ!気持ちは解ります…っ!
でもそんな武器じゃ太刀打ちできませんって!
無駄死にになっちまいます…っ!」
「それでも、重を放っておけるか…っ!!」
船上から、ずっと取り乱して叫んでいる兄貴分に
重は苦笑していた。
俺一人の事であんな風になってくれるなんて…。
先程東南風が捕まるように、重に向かって
縄を投げいれていた。
―が、もう力を使い果たした重は受け取れず、
浮いているのがやっとだった。
鮫には海中に潜ってから下に引き釣りこまれるのかと思った。
しかし、相手にその気はなさそうだ。
その証拠に尾鰭と黒い大きな身体は
見える一定の位置泳ぎ、距離を縮めているのだ。