【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
「ち、ちきしょう…っ!」
船内の扉近くで石火矢を構えていた航は
眉を顰めて歯噛みしていた。
するとその時。
航の背後で扉が勢い良く開かれる音がした。
何事かと目をむくと、そこには先程捕まえた闖入者が…。
息を切らして、周囲を伺っている。
そこで航と目があった。
「あっ、あの…!」
「な、なんだよ…!」
「い…今、誰かの悲鳴が聞こえて…っ!
もしかして重って人に何かあったんですか?」
「だっ、だったら何だ!お前には関係ないだ―」
「―いいからっ、教えて下さいよ航の兄貴っ」
突っぱねようとした航に向かって、そう言ったのは網問だ。
走り去った麻言の後を追いかけてきたのだ。
「網問っ、お前がいながら何やってんだよっ!」
「だから説教は後で聞きますってば!
それより重の兄貴がどうしたんですか!?」
網問の剣幕に押されて、
ちらりと隣の麻言を気にするも航は話しだす。
「―重の奴っ、舳先から落ちたんだ…っ
しかも今そっちに鮫が向かってる…!」
「―っ!」
「なっ、何だって!」
航の言葉に麻言と網問は目を見開く。
「っ。舳先…舳先はどっち!?」
航の胸元を掴む様にして、必死な顔で見上げている。
この非常事態。
なのに麻言の顔が近い事で何故か
航はドキリと大きく胸を鳴らしたのだ。
「えっ、えっと、あっちだ」
しどろもどろになり思わず答える。
航の指差した方を見ると、
水夫達が舳先に集まり始めていた。
前の方からは悲痛な舳丸の叫び声が聞こえている。
今にも泣き出しそうな。
麻言は俯き胸元をぎゅっと握りしめた。
悲しいのはよくない。悲しいのは見たくない。
その姿を見ていた網問は心配気に声を掛けようとすると。
今度は網問が麻言に胸元を掴まれた。
そして。
「―ねえっ!
それ、貸して…っ!!」
片手で自身の刀を指差していた。