【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
手を振り解く。
呆気に取られたような舳丸の顔。
それでも、その手だけはまだ弟分の手を掴み直そうと伸ばされる。
しかしそれは虚しく空を掴むだけだった。
落ちていく表情は諦めたような笑顔。
「━━━重ええええええええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!」
恐らく舳丸今来の人生で、一番の叫声だった。
それもとてもとても―悲痛な。
重が落ちた海面から大きな水飛沫が上がる。
その時。
一連の様子を目の当たりにしていた疾風の目の端で、
ゆらりと大きく黒い影が蠢いた。
全身に寒気が走る。
慌てて振り向くと、疾風は目を見開いた。
先程まで船から離れては体当たりを繰り返していた鮫。
同じ様にまた離れていくのだと思いきや、方向を変えたのだ。
それは、先程水飛沫の上がった方向。
重のいる海中へ向かっていた。
「ふっ、ふざけんなよおおおぉぉぉーっ!!」
疾風が咆哮する。
慌てて石火矢を点火すると、鮫に向かって狙いを定める。
爆発音と共に弾は飛び出した。
だが、今度はかすりもしない。
『うっうおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
これ以上はいかせまいと他の水夫達も
手に持った武器を鮫へと向けて、発射させていた。
しかし、海中でうまく回避しその距離はどんどん詰められる。