【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
気付けば、俺は岩場の多い浜辺でしゃがみ込んでいた。
別に此処に来たかったわけではない。
ただ、今は誰にも会いたくなかっただけだ。
先程まであんなに眠たかった筈なのに、眠気はすっかり吹っ飛んでいた。
おまけにふとした拍子に、思い出すのは先程の鬼蜘蛛丸の眼。
あいつが、あんな眼を俺に向けたのは初めてだと思う。
幼い時からの旧友で、自由気ままに生きてる俺を他の旧知の人間はあざ笑ったりもしたが、鬼蜘蛛丸だけはそんな事を一切した事がなかった。
……呆れられたり、怒られたりはしてたけど、あんな――
「……いたっ! 義丸さんっ」
その声に慌てて振り向く。
――麻言と、目があった。
走り回っていたのか、息を切らしているが俺を見た瞬間ほっとした様な顔になった。
なんで、ここに……。
その言葉を思わず口に出していたのか、
「鬼さんがね、多分人気のない海岸沿いにいると思うって言ってたから……っ」
こっち方面を探しに来たら当たりました……、と麻言が微笑む。
その時、鬼蜘蛛丸と昔数少ない喧嘩した時、この様に探しにきたのを思い出した。と。
しゃがみ込んでいた俺の目前に、麻言が何かを差し出した。
……おにぎり、だ。
大きめに握られたのがご丁寧に皿の上に三つ並んでいる。
「えっと、多分お腹空いてるんじゃないかなあって、急いで作ってきたんですけど~……、食べません?」
困ったように、眉尻を落としながら笑っている。
つまりあれか?こいつ、こんなでかいおにぎり皿ごと持って走り回ってたのか。
想像すると、その光景がとてもシュールで、
「――……ぷっ、あは、あはは……っ」
皿を持ったままぽかんとしている麻言の目前で大笑いしてしまった。