【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
俺は笑いながら、麻言の肩を抱き引き寄せようとすると――
その手を、ぱしりっ、と跳ね除けられた。
俺の手の甲に軽い痛みが奔る。
呆気に取られながら俺は手の甲を見つめていたが、やがてその眼を正面に見据える。
鬼蜘蛛丸と目があった。
だが、その眼はまるで軽蔑しているように、冷たい。
するとじわじわと俺の内側から、負の感情がこみ上げてきた。
身体が急速に冷えてゆく。
「……何だよ?」
自然と声が低く、重くなっていた。
鬼蜘蛛丸へ強い眼差しを向ける。
だが、その視線を受ける鬼蜘蛛丸の方も負けじと眉根を寄せて俺を見ていた。
何なんだよ、その眼は。俺が何したんだよ?
何でそんな眼で俺を――
「……あ、あの、二人共?」
嫌な空気を察したのか、俺達二人の間に挟まっていた麻言が狼狽している。
だが、今俺は見据える相手にこの感情をぶつける秒読みを開始しかけていた。
だが。
「――麻言~っ! ご飯まだ~っ? ……って、あれ兄貴達。麻言挟んで何やってるんですか?」
都合悪く、網問がやってきてそんな言葉を発するものだから。
はっと俺は我に返った。
そして、気付く。
もし今網問が入って来なかったら間違いなく鬼蜘蛛丸を殴りつけていた事に。
力を込めすぎた右手が、白く染まっていた。
「――っ」
行き場をなくした力を、壁へとぶつけると麻言と網問がびくりと震えた。
鬼蜘蛛丸は、微動だにしない。
「義――」
そう鬼蜘蛛丸が言葉を発しかけた瞬間、本能的に俺は逃げていた。
勢い良く、炊事場から出るとなりふり構わずそのまま駆けていった。