【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
「お早う、麻言! 今日も朝からご苦労さん」
「お早うございます、鬼蜘蛛丸さん! ――に、あれ? 義丸さんも! お早うございます」
律儀に二人分の挨拶をする麻言を見て思わず笑いながら、俺も挨拶を返した。
鬼蜘蛛丸が麻言に近づきながら、
「人手が空いたんで、手伝いに来たんだが私が出来ることはあるか?」
「そうなんですか~、有難うございます!えっと、煮物はもうすぐ出来ますし……――あ、そこのししゃもを焼いて頂けませんか?僕はその間お味噌汁を作って、漬物を切りますんで……!」
てきぱきと麻言が答えると、鬼蜘蛛丸は解ったと了承してすぐに取り掛かる。
こいつあ、凄い。まるで阿吽の呼吸だ。
船上での俺と鬼蜘蛛丸のようだなと、他人事のように思う。
陸にいると大概陸酔いする鬼蜘蛛丸は、料理に集中している時だけは陸酔いを忘れていた。
まあ、料理が終わった途端に嘔気が始まる為、皆の食事が終わるまで放り出されるのが常なんだがな。
「ん? こらっ、義っ。見てるだけだったらお前も手伝わないか! 食器ぐらい並べろっ」
お前は俺のお母さんか。
内心そんな突っ込みを入れながら「へいへ~い」とだらしなく返事をすると、麻言の隣に置いてあった食器の方まで近づく。と。
「――あれ、何か良い香りが……?」
隣の麻言がそんな事を言い出した。
すんと鼻を動かし、どうやら香りの根源――であるらしい、俺に近付いてくる。
「あ、やっぱり義丸さんからしますね。何ですか、この匂い?」
甘い様な、果物みたいな……、そう呟く麻言の言葉に少し眉を顰める。
ふむ。何だろうな、心当たりがない。
――……ああ、そうか。
思い出した。確か昨日一緒に寝た女にそんな匂いがしてたはずだ。
俺の肌に匂いが染み付いていたのか。
「いい匂いですね~! 何か美味しそうっ」
にこにこと無邪気に笑いながら、麻言がそんな感想を口にする。
美味そうな匂い……っ、と言われると、正直微妙な気持ちだが、こんな嬉しそうな顔をされると悪い気はしないな。
「はははっ、そんなに好きならもっと嗅ぐか?」