【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
「―…こっ、ここです…っ!」
少し力がないが、紛れもなく重の声だ。
しかし場所が特定できない。
こころなしか皆から離れた所から聞こえるが。
思わず舳丸が叫んだ。
「重っ!何処だっ!何処にいるっ!?」
「―っ。…さきですっ!舳先(へさき)の方です…っ!」
重の声に耳を済ましていた皆の目が舳先へ向いた。
だが一同眉を寄せる。
肝心の重の姿が見つからないのだ。
「し―っ。…っ!!」
もう一度呼びかけようとした舳丸の目が見開かれた。
舳先の縁に、『手だけ』が見えた。
「…く…っ!」
悔しそうに呻く重は。
船の外側から縁に片手だけで捕まっていたのだ。
力なくぶら下がる全体重をその腕に預けて。
「や、やばい…っ!」
近場にいた間切が叫び、舳先目掛けて飛び出した。
それに舳丸と東南風が続く。
しかし。
「さっ、鮫が来るぞおおおおおぉぉぉぉっ!!」
焦りを含んで水夫は叫ぶ。
無情にも敵は待ってはくれなかった。
もう目と鼻の先まで迫っている。