【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
「――っ……!」
手が、俺の腕の傷にまで到達すると、今度は労るように力を緩め、なぞる。
ゾクゾクと何とも言えない、高揚感がこみ上げてきた。
あっ、これやばい。色々と。
思わず、俺は麻言の両肩を押して遠ざけていた。
きょとんとした、透き通った眼とかち合って俺は顔を背ける。
「おおぉおおいおいっ、何やってんだよ、麻言」
なるべく平静を装って、そう言うと、
「ああ、急にごめんねっ。実は前に白南風丸に筋肉ないなあって言われた事があって。――……白南風丸も筋肉凄かったけど、やっぱり航もそうだなあっと思って羨ましいなあって」
「う、羨ましいって……」
何で筋肉付けたいんだこいつは?
……ツウカ白南風丸、今度シメル。
――しかし、まあ驚いたけど一応納得した。
だけど。
「その、麻言。お前あんまり、そんなベタベタ男の肌に触れるもんじゃないぞ」
「え、何で?」
う、ただでさえ一杯一杯なのに、追い打ちをかけてくる。
どう言ったらいいんだよ、そんな……。
と、いうかいつも思うけど、何で麻言はこんなに男女間の意識がないんだ?
これも記憶喪失のせい、なんだろうかなあ。
……でも、とにかく言っとかないと、その内今と同じ過ちをまた繰り返す事になっちまうかも。
正直俺にそうするなら良い。でも、他の奴にされるのは見たくないし、考えたくない。
「麻言あのな……、やっぱ女にやたらめったら触られるとその、男ってやつは勘違いしちまうんだよ。自分のこと、好いてくれてるのかなって」
あ、何かこれ保健体育の授業っぽい。
「? 航の事は好きだけど……」
その“好き”が別の意味の好きだと解っていながら、くらりと目眩に似た感覚を起こす。
片手で頭を抱えて溜息をついた。
はあ~、辛い。
俺はこの目前の女子に対して、その“方向性の違う好意”を抱いてるだけあって余計に。
「ああ、もう、違うんだよー……――と・に・か・く! 無闇に男には触れないこと! 解ったな?」
「え、え~? じゃあ……忍術学園の子達は? 乱太郎君達とか」
「そ、それは大丈夫、かな」
子供だし、安心していいだろう。
そこで俺は“忍術学園の子達”と言う言葉に引っかかりを覚えるべきがったが、それについては後で後悔することになる。