【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
「それなら、嬉しい……な」
笑っている。笑っているが無理をしていることは明らかだ。
畜生――、馬鹿か俺はっ!
その老夫婦が心配でたまらねえだろうに、そんな事言ったら余計に心配させちまうだろうがっ。
心の中で自身を激しく叱咤した。
こういう時、きっと仲間内の連中なら上手く言えるだろうに。
ばつが悪く、俺はそのまま無言でいると、
「あのね、東南風」
そう突然麻言が切り出した。
「さっきね、実は、町に行ったことがあるって言ってたじゃない」
「……ああ」
「……実は、一度だけ、お爺さんとお婆さんに連れられて町に行ったことあるんだ。多分一緒に住むようになってからそんなに経ってない頃に。あの頃の僕は、今よりもひどくぼうっとしてたから気晴らしに――って」
「そうなのか……」
確かに、麻言は時々ぼうっとするところはあるものの、よく話しころころと表情が変わる。
正直想像はできないが、そんな時期もあったのか。
「それで、町に連れてって貰って僕は二人作った野菜売りを手伝ってたんだけど、途中で確か男の人に声を掛けられて、建物の後ろに一緒に行ったら急に押し倒されて――」
「――なっ!」
「――でも、そしたらすぐに、目の前にいた男の人が倒れてね。お爺さんが後ろから木の棒か何かで頭を殴ったみたい。……それで、後から人を連れてやってきたお婆さんは、私を見て泣いてた。『怖かったじゃろ、ごめんねえ、目を離したりしてっ』って、何回も謝りながら」
急な話の展開に肝が冷えたが、事なきを得たようで俺はほっとするも、語る麻言のの表情は冴えない。
「僕……、正直男の人に何されそうになったのかは解らなかったし、今も解らない。――けど、お婆さんがあんなに泣いてるのを見た時、悲しくて申し訳なくてしかたなくなった。その後、家に帰ってから僕はお爺さん、お婆さんに『これから、外に出る時は自分の事を”僕”と言いなさい』って言われて、今着てる服をお婆さんが作ってくれたんだ」
「……なる程な」