【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第2章 忍術学園での邂逅【幼虫編】
「お前――、この間舳丸の兄貴と町へ行ったのが初めてらしいな」
「うん、そうだよ」
「……老夫婦と住んでた時も、一回もか?」
本当にちょっとした疑問だった。
「うんと……実は一回ちらっと中を見たことだけ、なら」
あんまり覚えてないけど、と付け加える。
だが、そう言った時眉尻を下げた麻言が視線を落としたのを俺は見逃さなかった。
追求するべきか悩んだが、もう間もなく到着しようとしていたので、その時は諦めた。
最初の家は断られた。
が、その後付近の別農家から、ほぼ新品同様の鍬を思いの外安く買い取ることができた。
そこは老夫婦二人だけで小さな畑を作って細々と生活していた。
しかし、片割れの婆さんの方が身体を痛めて農業ができんという理由で、何でも近々息子夫婦と同居することになったらしい。
その為、数日後にはこの土地からは離れるそうだ。
「息子夫婦は農家じゃあないもんでなあ。町でうどん屋をやってての。農業道具をどうしようかと悩んでた所に渡りに船じゃよ」
そう言って嬉しげに爺さんは笑った。
「有難うございます、こちらこそ助かりました」
「いえいえ。大事に使っておくれな」
「はい! もちろんです」
そう言って爺さんに微笑みかける麻言が。
何となく、目前の爺さんを通して何処か遠くを見てるような目をしていた。
爺さんに見送られながら、俺達は帰路につく。
俺は片手で爺さんに貰った鍬を担いでいた。
麻言が何度か、僕が持つから……! と焦って言っていたが、女に重いもん持たせて男の方が手ぶらってワケにもいかねえだろ。
そんな麻言に「いいから」と一言制した。
「お爺さんもお婆さんも……息子さんか娘さんがいたら、いずれあんな感じになってたのかなぁ」
「そのご夫婦には子供は?」
「……いたけど、小さい時に亡くなった、らしいんだ」
「そうか……じゃあ、今はお前がその夫婦にとって大切な娘なんだな」
まずいことを言った。と、思った時は遅かった。
慌てて麻言の方を伺うと、顔が見るからに曇っている。