【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
「おいっ、重っ!」
はっと自分の名を呼ばれた事に気づくと、
重が慌てて振り返り
「はっ、はい!どうしました影太夫?」
「どうしたもこうしたもねぇっ!
なんでぇっ、その千鳥足は…!そんなんじゃ危ねぇだろっ。
ここは良いから、お前ぇはとりあえず船内で休んでろっ」
「い、いえ、大丈夫ですよっ!まだまだ元気っすからっ」
誰の目から見ても空元気であることは明らかだ。
しかし、笑顔でそう言って重は両腕を上げ下げし
身振り手振りで主張すると踵を返した。
「な…っ!重っ!」
呼び止めに応じず、
まるで聞こえていないとでも言うようだった。
蜉蝣は眉を顰める。
普段の重なら兄貴分の気遣いをまだ快く受け取るはずだが―
「気に…してるのかもしれませんね、さっきの事…」
後方から来た鬼蜘蛛丸がそう言った。
思考を巡らす。
「…あの不審者を庇った時か」
蜉蝣の答えに無言で肯定すると
「重は逞しくての度胸のある奴ですが、まだ若い。
それに、少し優しすぎる面もありますから」
困ったように鬼蜘蛛丸が笑うと、蜉蝣も同様の笑みを見せた。
仲間であり、家族でもある兵庫水軍。
しかし、この中で生き抜くためには厳しい決まりもあるのだ。
それをかせられているのは重だけではない。
「…でも、案外お頭も重を叱った事
気にしてるのかもしれませんね」
「成程っ、それで船酔いをぶり返したか」
二人はお互いに笑みを深める。
そして、やりきれないと思う時がある事も皆同様なのだ。
きっと。