【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第2章 お屋敷での共同生活
【紅夜】
「それで、どうする。
うちに遣うか?
わらわは構わんがここは妖怪の山。
お前からすれば未知の世界だろうの。
今なら死を選んでも別に咎めはせん。
だが一度こちらを選べば死など選ばせぬぞ。」
あねさまが話す横で
世喜は相変わらず俯き言葉を発そうとしない。
こいつ、あねさまにこんな態度が許されると思っているのか。
「ッ・・・・!」
たまらず声を荒げようとした瞬間
あねさまの手に静止される。
「あねさま!」
「よい。
まだ選択権はこやつにあるのだ。
死か遣いか選ぶまではの。
選んでからでも遅くはあるまい。」
ほんとにあねさまは甘い。
人間なのに。餌なのに。
こいつを使えば最近反抗的な人狼の一族も手懐けられる。
(もちろんそんなことをしなくても
力を使ってしまえば沈めることはたやすいのだけれど。)
でもあねさまはそれをしない。
なんだかんだ、人間が好きなお方。
きっとあねさまは気付いていないけど。
「俺を、遣いにしてくれ。」
あねさまの言葉以来静かになっていた間に
世喜の声が嫌に響いた。