第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
一方、クレイオが手配したタクシーで無事にメリー号に辿りついたゾロは、船に上がるなり男子部屋に直行する。
「おい、チョッパーはいるか?」
「あれ、ゾロ?!」
パチンコの手入れをしていたウソップが驚いた顔をしながらゾロを振り返った。
「お前、知り合いの所に泊まってたんじゃねェのか?」
「知り合い?」
「ああ。昨日、ロビンがそう言ってたぞ」
「・・・あの野郎・・・」
はっきりと“娼婦”と言えばいいものを。
気を使ったんだかなんだか知らないが、説明するのが余計面倒臭くなったじゃないか。
ゾロは眉間にシワを寄せた。
「で、チョッパーは?」
「チョッパーならナミの手伝いでみかん畑を手入れしてる」
「分かった、ありがとな」
「あ、おい、ゾロ!」
帰って早々、なんなんだ? と、ウソップは首を傾げながら、部屋を飛び出していったゾロを見送った。
ウソップの言う通り、みかん畑では人型をしたチョッパーが、ナミの指示のもとにみかんの木を剪定していた。
「チョッパー!」
「あ、ゾロ!」
「お前に頼みたいことがある。今すぐ診察道具をもって、おれと一緒に来てくれ!」
「頼みたいこと? 腹でも痛いのか?」
チョッパーは目をぱちくりさせながら、甲板に立っているゾロを見下ろした。
するとナミが後ろから怒声を飛ばしてくる。
「ちょっとゾロ! 今は私がチョッパーにお手伝いを頼んでいるのよ! 邪魔しないで!!」
「うるせェな、急いでんだよ! お前の手伝いだったら、ラブコックがいるだろ!!」
と言い終わらぬうちに、蹴破る勢いでキッチンのドアが開く。
「今なんつった、マリモ!! んナミさん~、お手伝いならおれがするよ!!」
ゾロを威嚇しながらも、鼻の下を伸ばしながらナミのもとに飛んで行くサンジ。
まあ、彼が手伝ってくれるなら、とナミも納得してくれたようだ。
良かった、こいつがアホで。
今回ばかりはコックに感謝し、ゾロはその隙にチョッパーを連れてメリー号をあとにした。