第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「お前のバカさは父親譲りだな、クレイオ」
「え・・・?」
「父親もそうやって、何でも信じちまうから“破滅”したんだ」
「どういう・・・こと・・・?」
そこから語られた“真実”は、クレイオの精神を破壊するには十分すぎるほど残酷なものだった。
「もともとあの炭鉱は、良質な石炭が採れる一方で、ガスが頻繁に発生するという危険な場所でもあった」
それでも利益を優先し、鉱脈を求めてさらに地下深くへ掘り進もうとした会社を懸念する声もあった。
だが、男は邪魔な“声”を揉み消しただけでなく、ガス抜きや地盤の補強も満足に行わないまま、毎日大量の作業員を坑内に送り続けていた。
「おれにとっちゃ、金さえ入れば会社なんてどうでも良かったんだよ」
頻繁する落盤や小規模の炭塵爆発は、クレイオの父の耳に入る前に男が“処理”してしまった。
「あの事故の日もそうだ。あの炭鉱の壁をちょっと削ればガスが噴き出すことは分かっていた。だが、そんなことを気にしちゃ金を生み出すことはできねェ。だから・・・」
父に“発破”の許可を出させた。
「別におれだって殺そうと思っていたわけじゃねェ。事故は事故だ、いつ起こるかなんて誰にも予想できねェだろう?」
「そのために! どれだけの人が死んだと思っているの?!」
「“殺した”のはお前、その判断を下したのは父親だ」
そもそも、クレイオの父がこの男の言葉を鵜呑みにしなければ、事故など起こらなかったかもしれない。
今となっては何も証拠はなく、彼を裁くことはできないだろう。
男は二ヤリと笑った。