第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
時間にして、わずか数分。
しかし永遠にも感じた白昼夢から、ようやく意識が現実に戻される。
クレイオは辺りを見回して、自分のいる場所がシッケアール王国の城であることを確認すると、新聞を持ったままソファーに崩れ落ちた。
「ハァッ・・・ハァッ・・・!!」
気持ち悪い。
吐きそうだ。
寒気が強いのに、汗が噴き出している。
このまま目を閉じたら気を失ってしまいそう。
なんとか意識を繋ぎとめようと、両手で顔を覆ったその時だった。
「クレイオ?」
今、一番聞きたくない声が聞こえてくる。
「お前、気分でも悪ィのか? 顔が真っ青だぞ」
鍛錬から戻ってきたゾロが、厨房へ水を取りにいく途中だったのか、クレイオのいる居間に入ってきた。
「・・・なんでもない」
「とてもそうは見えねェな」
ゾロはクレイオの目の前で屈むと、顔を覗き込んできた。
ああ、本当にやめて欲しい。
「・・・吐きそうになっていただけ」
「なら便所につれて行ってやる。それともバケツを持ってくるか? それも間に合わねェなら、おれの手の中に出せ」
「放っておいて!」
今はゾロの顔を見たくない。
ミホークの弟子でありながら、彼の命を狙う男の顔など。
「・・・ミホークは・・・? まだ帰ってこないの?」
「おれに聞くな。そのうちフラッと帰ってくんだろ」
「・・・・・・・・・・・・」
「なんだ、あいつが心配なのか?」
心配?
違う。
怖いんだ。
「おい、どうした。なんか言え」
ゾロは気が利く男ではない。
不器用なくせに優しいから、こういう時に一人にしてくれない。
「・・・新聞」
「あ?」
「その・・・サウスブルーの魔女狩りの記事・・・」
クレイオが指さしたのを見て、ゾロはいつの間にか床に落ちていた新聞を拾い上げた。
そして開いたままのページを一通り読み、怪訝そうな目を向けてくる。