第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「これがどうした? 海賊が村で暴れることなんてザラじゃねェか」
「でも、それだけの事件を起こしたのに、海賊団の名前も、懸賞金も明かされないなんて不自然だと思わない?!」
「・・・まァ、そりゃそうだな」
ゾロも1年前までは麦わら海賊団として、エニエス・ロビー事件など新聞を賑わせていた。
その時はモンキー・D・ルフィをはじめとした一味全員の名前と懸賞金が新聞で公開された。
「でも、世の中には海賊行為が特別に許されている人達がいる」
「・・・お前、そりゃあ・・・」
王下七武海。
わずか7人の世界政府に認められた海賊は、決められた条件の範疇であれば、どのような非情な行為でも免罪が下りる。
「この村を襲ったのはミホークだって言いてェのか?」
「・・・ミホークは出掛ける前の晩・・・この島についての記事を読んでいた・・・」
「だとしても、あいつの興味を引くものがこの島にあったとは思えねェけどな」
「興味を引くものなら・・・ある」
───魔女狩り・・・
「・・・クレイオ?」
「ごめん・・・本当に今、気分が悪い。これ以上は話したくない」
心配してくれているゾロに失礼だとは思う。
けれど、こうしてそばに居られるのがつらい。
「チッ・・・仕方ねェな」
ゾロは面倒臭そうに頭を掻くと、クレイオの背中と膝の下に手を突っ込んだ。
そして軽々と抱き上げる。
「ゾロ?!」
「安心しろ、連れてくのはお前の部屋だ。運んでる間はゲロ吐くなよ」
「・・・・・・・・・・・・」
こんな居間のソファーじゃなくて、自分のベッドで寝てろ。
あとでペローナに粥でも持っていかせる。
そう言うと、横抱きにしたクレイオの額にチュッとキスをするゾロ。
こういう優しさは心臓に痛いから、やめて欲しいのに・・・
「ごめん・・・ゾロ・・・」
貴方に全部話してしまえばどんなにラクだろうかと思う半面、貴方に心を許したくないとも思ってしまう。
「気にすんな。その代わり、治ったらヤらせろよ」
「・・・最低な男」
いつもの調子で話すゾロに、思わず笑みが零れる。
そんなクレイオを抱きかかえながら、ゾロは“最低で結構”と優しく微笑んでいた。