第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「ゾロに出会ったから・・・」
「あ?」
娼婦としてボロボロになっていた自分を労わってくれた強面の海賊。
身体の中に溜まった別の男の精液を、躊躇わずに掻き出してくれた。
「あの時、私は初めて“男性”の優しさに触れた気がした」
「・・・・・・・・・・・・」
「あんな気持ちになったのは初めてで・・・ちょっと欲が出て、娼婦としてではなく別の形で働くことはできないかと頼みにいったのよ」
望みはもともと薄かった。
ただ、ほんの少しでも希望があるならば、どんな肉体労働でも耐えるつもりだった。
だが、返ってきたのは暴力だった。
『島中から恨まれ、大した力もないお前に、娼婦として以上に稼げる方法などあるわけねェだろう!』
『今更、人間扱いして欲しいとでもいうのか』
鞭で打たれ、罵られていた時、彷徨い込んできたゾロに助けられた。
「そんな怖い顔をしないで、ゾロ。私なら大丈夫」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも・・・もう遅いけれど・・・ちょっと思うことがある」
自分を抱きしめてくれる腕、こんなにも温かい・・・
「貴方に出会わなければ良かったって・・・」
こんなにも力強く、安心できる・・・
「そうすれば、人の優しさを知ることなく・・・何も考えずに娼婦を続けていられたのに───」
クレイオの後ろには、まだナイフが置いていある。
それを掴めば、ゾロの胸を一突きにできるだろう。
「躊躇なく、賞金首の貴方を刺すことができていたのにって・・・」
でも、もうそれはできない。