第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「いらっしゃい」
出迎えたのは、いつもの主人。
今朝も会っているというのに、不自然すぎるほどの恭しさに、ゾロの中の違和感がますます強まっていく。
クレイオは店主に一瞥もくれず、そのまま階段を上っていってしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「お客さん、あとで酒をお持ちしましょうか?」
「・・・いらねェ」
「そうですか・・・じゃあ、ごゆっくり」
仰々しい店主の態度もおかしい。
“敵”の気配はしないが、明らかにこれまでと違う空気を感じる。
ゾロが二階に上がると、一番奥の部屋のドアが半分だけ開いていた。
まるで、“この部屋に入ってください”と言っているようだ。
誘われるがままに中に入ると、クレイオがベッドの前に立っていた。
備え付けのテーブルの上には、ロビンから受け取った2万ベリーがそのまま置いていある。
「・・・ゾロ」
「どうした、お前。なんか変だぞ」
言い終わらぬうちに、クレイオは来ていたワンピースのボタンを外し始めた。
下着すらつけておらず、すぐに一糸まとわぬ姿となる。
「・・・・・・・・・・・・」
そして、無言のままゾロに近づくと、首筋にキスをした。
ふわりと鼻を撫でる、月下香の香り。
艶めかしく、扇情的なその芳香は男の欲望を呼び覚ます。
“夜の花”の香りを漂わせるクレイオは、完全に“娼婦”としてゾロを煽っていた。