第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「あ・・・な・・・仲間の人?」
「仲間っつうか・・・まあ、一緒の船に乗っている奴だ」
───仲間・・・こんな綺麗な女の人が・・・?
「それよりどうした。おれに何か用か?」
「そ・・・その・・・」
本当はずっとゾロを探していた。
だが、その理由をここでいえば、ゾロが娼婦と関係を持っていることを仲間に知られてしまう。
「・・・・・・・・・・・・」
クレイオが黙っていると、ロビンが静かに口を開いた。
「剣士さん・・・ここにいる娼婦さんは、何か事情があって貴方を探していたんじゃないかしら」
「お前、なんでクレイオの仕事のこと───」
「あら、ごめんなさい。周りの人達が話している声が聞こえて」
そう言って、二コリと微笑む。
ゾロが周囲に目を向けると、クレイオを見ながらヒソヒソと陰口を叩いている人間達の後ろで花びらが散っていた。
“おいあれ、クレイオじゃないのか?”
“あれだけの人間を殺して娼婦に成り下がった女が、ここで何してるんだ”
ハナハナの実の能力を使って盗み聞きしたのか───
悪趣味な女だ、とゾロは顔をしかめた。
「おい、クレイオ・・・お前、本当におれを探していたのか?」
「・・・あの・・・今日は来てくれないのかと思って・・・」
「悪いが、もう店には行かねェよ。そもそも、金が無ェ」
チンピラから巻き上げた金は底を尽きている。
手持ちの金は、船に積む酒を買うためのものだ。
「・・・そう・・・」
クレイオが酷く落胆した顔を見せた、その時だった。
「お金なら、私が出しましょうか? おいくら?」
思いがけないロビンの申し出に、ゾロだけでなくクレイオまで驚きのあまり一瞬絶句した。