第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
午後の港町は活気にあふれ、様々な店が並んでいる。
大通りを歩きながら、ゾロは不機嫌そうな目をロビンに向けた。
「いいか、おれは酒を買ったら船に戻る。お前に付き合って本屋に行くつもりはねェからな」
「それは構わないけれど・・・そっちは逆の道よ」
「え」
斜め右に酒屋の看板があるというのに、左の路地に入っていこうとしていたゾロは、ゴホンと咳払いを一つしてからロビンの隣に戻ってくる。
これは重症ね・・・と憐れに思った考古学者が、ゾロに似合いそうな鈴付きの首輪はないものかと考えていた、その時。
「ゾロ・・・!」
人の往来の中から、ゾロの名前を呼ぶ女の声がした。
聞き覚えのない声にロビンは首を傾げたが、ゾロは違う。
「クレイオ?」
振り返ると、少し後ろの方にフードを深くかぶったクレイオが立っていた。
「どうしたんだ、お前」
「・・・ゾロ・・・見つけた・・・!」
港町へ買い物に来ていたところ、偶然ゾロ達を見かけた・・・というわけではなさそうだ。
自分を探し回っていたのか、息が弾んでいる。
クレイオの顔を覗き込むと、フードに半分隠された左の頬が赤く腫れていることに気がついて、ゾロの手がピクリと動く。
「・・・殴られたのか?」
「これは・・・なんでもない」
「・・・・・・・・・・・・」
「それより、私は貴方に会い・・・」
ゾロの服を掴み、何かを言おうと顔を上げた瞬間、隣にいたロビンの存在がクレイオの目に入った。