第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
すると、キッチンの方から全員分の食事を作っているサンジの声が飛んでくる。
「もうすぐだぞー! あ、けど、酒はねェからな」
「なに?! ちょっと待て!!」
その言葉に反応したのは、ゾロ。
まったく、この船の剣士の思考回路には、大剣豪と酒しかないのだろうか。
ルフィに続いてキッチンに飛び込んでいったゾロに、ウソップは呆れながら肩をすくめた。
「なんで酒がねェんだよ!」
「お前が全部飲んじまったんだろうが!」
つい最近行ってきた空島では、十分な食料や飲み物を積み込むことができなかった。
それを何とかするのがコックだろ、アホ! というゾロの怒鳴り声と、なんでおれがお前のために酒を用意しなきゃなんねェんだ、クソマリモ! というサンジの怒鳴り声が飛び交う。
「そんなに飲みてェなら、自分で買ってこい!」
「ああ、そうさせてもらう!」
「ちょっと待ちなさい、ゾロ!!」
キッチンを出ていこうとしたゾロを、ナミが慌てて呼び止めた。
「あんた一人で行ったら、また迷子になるでしょう! 私も一緒に行くわ!」
「ふざけんな、おれ一人でじゅうぶんだ」
「ぬわにィ!! ナミさん、こんなマリモヘッドとじゃなくて、おれと一緒に行こう!」
「サンジくんは晩御飯の支度があるでしょう」
「でも、こんなアホのためにナミさんまで酒を買いにいかせるわけには・・・」
アホとはなんだ、この素敵マユゲ! というゾロの怒鳴り声と、アホにアホと言って何が悪い、この脳みそ筋肉バカ! というサンジの怒鳴り声が、再び飛び交い始める。
いたって普通な、ゴーイング・メリー号の日常風景だ。
「あはははは、ゾロとサンジは本当に面白ェな!!」
ルフィが大笑いしながら手を叩いていると、本を読み終えたロビンがキッチンに入ってきた。