第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「なあなあ、次はどんな島かな?!」
「そうだなァ、チョッパー。次は夏島だな!! ジャングルがあってよ~」
「へぇ、夏島かぁ」
「勝手なこと言ってんじゃねェよ、ルフィ! おれァ、もう“夏”は懲り懲りだ・・・アラバスタで死ぬほど砂漠を歩いたじゃねェか!」
「うはははは、楽しかったなァ~」
勝手なことを言っているルフィと、それを信じるチョッパー、ツッコミを入れるウソップはとても楽しそうだ。
“貴方は・・・私の知らない世界をたくさん知っているのね・・・”
“この島しか知らない私にとっては羨ましい・・・”
クレイオは誰かと笑うことなどあるのだろうか。
“償いきれない罪を背負い、島の人間からの恨みを一身に浴びる、腐った女だ”
この島には、クレイオと笑いあってくれるような人間はいるのだろうか。
「なんだ、ゾロ! 考え事してっと熱が出るぞー」
「うお!!」
突然、目の前にルフィの顔だけが飛んできて、心臓が飛び出るかと思った。
ルフィはゴムゴムの能力で、遠くにいても首だけを伸ばして顔を近づけることができる。
慣れていても、やはり驚くものだ。
「あの山になんかあんのか?! ウマい肉とか?!」
「別に・・・」
クレイオのことは気になるが、所詮は他人。
もう二度と会う事もないだろう。
「ゾロ、帰ってきてからなんだか様子がおかしいぞ」
「なんだ、ゾロがどうかしたのか?」
ほら、ルフィが変なことを聞くから、ウソップまでやってきてしまったではないか。
ゾロはしかめっ面をしながら目を閉じた。
「別に、なんでも・・・」
「ああ、分かった! お前、腹減ってんだろ!!」
「いや、ゾロをお前と一緒にすんなよ、ルフィ」
「サンジー!! 飯!!」
「・・・・・・・・・・・・」
今までゾロの話をしていたというのに、まるで自分が腹が減ったとばかりにキッチンへ飛んで行く。
まったく、この船の船長の思考回路には、ワンピースと飯しかないのだろうか。