第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
これが・・・海賊・・・?
これが・・・男・・・?
「バカ・・・みたい・・・」
「なんだと?!」
「私のような女に・・・優しくして、見返りに何を期待しているの?」
私は何も持っていない。
与えてくれる優しさに何かを返すことができるとしたら、この身体しかないというのに・・・
「バカはお前だろ」
「・・・・・・・・・・・・」
「見返りになるようなモンを持ってねェなら、出されたモンぐらい黙って受け取ってろ」
奪えるものは奪っていく、それが海賊。
見返りを要求されようものなら、銃を突き付けてでも奪い去っていくのが、海賊だ。
そんな海賊に差し出されたものは、素直に受け取っておかないと、逆に命を奪われかねない。
そういうものなのかもしれない。
「あと、二度と自分を卑下するような物言いはするんじゃねェ。お前はお前だ、クレイオ」
人間以下でも、“私のような女”でもない。
「ゾロ・・・」
「ん」
ゾロは酒を口に含みながらベッドを指さした。
もう寝ろ、そういうことなのだろう。
「まだようやく夕方になろうとしているところよ。寝られるわけないじゃない」
「つべこべ言わずに寝ろ。また怪我してんだからよ」
「・・・・・・・・・・・・」
寝れば治る、そう言いたいのだろう。
しかめっ面でベッドを指さし続けているゾロを見ていると、なんだか笑えてくる。
「何笑ってんだ、気持ち悪ィな」
「ごめんなさい」
可笑しさと、温かさを感じながら、クレイオはベッドに横になった。
隣に一人分のスペースを空けて。