第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「お客さん・・・どうするんですか?」
「あ?」
店主はオロオロしながら、酒を飲みなおすためにカウンターに座ったゾロと、店のドアを交互に見ていた。
「テーブルのことだったら悪かった・・・修理代は払う」
「そんなことじゃねェよ!」
困っているのはカウンターに銃弾が撃ち込まれたせいかと勘違いし、ゾロがペコリと頭を下げると、青ざめながら首を横に振る。
「あんた、マズい人を怒らせたよ。あれはこの島を牛耳っているマフィアの一人だ」
「へえ・・・」
「のんきに酒なんて飲んでいる場合じゃねェ。旅の人なら今すぐこの島を出た方がいい! 跡形もなく消されるぞ、あんた!」
「面白ェじゃねェか・・・ちょうど退屈していたところだ」
“おい、酒”と空になったジョッキを差し出してくるゾロに、店主はとうとう痺れを切らす。
事の重大さを分かっていないのは、この島の人間じゃないからだ。
下手すれば、この店にも火の粉が飛んでくるというのに。
「島の権力者がバックについている奴らだ。殺されて揉み消されるぞ」
「心配してくれるところ悪いが、権力者だろうが国王だろうが、“力”の前に屈するつもりはねェ・・・おれの道を邪魔する者は斬る・・・ただそれだけだ」
二ヤリと笑いながら、並々と注がれたビールを一気に飲み干す。
そんなゾロを見て、“イカれている”と背筋に寒気が走った。
「とにかく、アイツが帰ったってことは、クレイオは客の相手をする必要はねェんだな?」
「ああ・・・そうだが」
「じゃあ、おれが一晩買う。2万でいいな?」
緑色の髪をした剣士は、先ほどの客が置いていった数千ベリーの上に2万ベリーを乗せ、不敵な笑みを浮かべた。