第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「お前・・・まさか・・・」
緑色の髪・・・
腹巻・・・
腰に下げた三本の刀・・・
間違いない。
「・・・・・・・・・・・・」
アラバスタ王国で七武海の一人が失脚したことは、この島でも大きなニュースとなった。
その直後、海軍によって新たに配布された手配書が、客の脳裏をよぎる。
「どうした、やらねェのか?」
目の前にいるのはロロノア・ゾロ。
アラバスタの動乱に関わったとして6000万ベリーの賞金をかけられた、麦わらの一味の一人だ───
「まさかこんな島に“億超え”の海賊団が現れるとは・・・」
「・・・あ? 何をゴチャゴチャ言ってやがる」
しかし、ゾロの正体を知った男は、もはや戦意は無くしたとばかりに銃を下ろすと、クルリと背を向ける。
「やめておこう・・・お前と争って命が助かるとは思えねェからな」
「・・・?」
「クレイオも好きにしろ。酒の邪魔をして悪かった」
6000万の賞金首が、クレイオに肩入れしている。
これは面白い。
男は何かを企むような薄ら笑いを浮かべながら、娼婦を抱くどころか、カウンターに置いた金すらもそのままに、店から出て行った。