第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「た・・・炭鉱に行ったのか?」
「もう使われていないようだったがな」
「お客さん、旅の人だろ? あそこは・・・近寄らない方がいい」
この島の人間なら、決して近寄らない場所。
それには理由がある。
「昔はこの島一番の炭鉱だったんだが・・・5年前に大事故が起こって以来、人が寄り付かなくなったんだよ」
だが、それは表向きの理由。
本当のところは───
店主がさらに何かを言いかけたその時、店のドアが開いた。
「よう、クレイオはいるか?」
入ってきたのは、昨日ゾロの前にクレイオを買っていた男。
身長は2メートルほどあるだろうか、派手な柄のシャツを羽織り、ひざ丈のズボンのベルトからは拳銃をぶら下げている。
店主は男の来店にギクリとすると、取り繕った笑顔を向けた。
「これはこれは、ダンナ。クレイオならいつもの部屋で待ちかねていますよ」
「そうか」
男は乱暴にカウンターの上に金を置いた。
ゾロが横目で見ると、それは1万ベリーにも満たない。
・・・それが、この男と店主にとってのクレイオの“値段”というわけか。
クレイオはたったこれだけの金で、憔悴しきるほど抱かれなければいけないのか。
“売春宿へ・・・”
鉱山からの帰り道、ゾロの背中でそう呟いたクレイオの悔しそうな声を思い出す。