第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
その頃、仲間による自分の捜索活動が行われていることを知らないゾロは、港町を目指しているはずが、さらに山の奥地へと彷徨い込んでいた。
「ここはどこだ?」
売春宿の正面の道を真っ直ぐ行けば港町に着くと、店主は言っていた。
かれこれ数時間は歩いているが、海に近づくどころか、さらに木がうっそうと茂ってくる。
「あのオヤジ・・・嘘つきやがったな」
そもそもゾロは教えられた道ではなく、三歩歩いてすぐに何故か獣道に入ってしまったのだが、そのことを知らぬは本人ばかりだった。
しかし、今更引き返すのも面倒だ。
歩いていりゃそのうちつくだろう。
そう思って、3時間。
「ん・・・? なんか、様子が変わってきたな」
段々と辺りの景色が変わっていっていることに気が付く。
木が少なくなり、足元には砂利が増えてきた。
これまでは獣道同然だった道も、少しずつ幅が広まり、ついに大型馬車が通れるほどになっている。
潮の匂いがしないから、少なくとも港町に着いたわけじゃないことは確かだ。
「・・・ここは・・・?」
顔を上げたゾロの視界に飛び込んできたのは、突然現れた崖。
それは人工的に山を削ってできたもので、大きなトンネルもある。
そして、その入り口は鉄格子で固められていた。