第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「・・・炭鉱・・・鉱山か?」
トンネルの大きさからして、かつてはかなりの労働者が行き来していたことが伺える。
すでに閉山しているらしく、ひっそりと静まり返り、あたりに人影はない。
「ルフィが見たら探検するって言ってきかなかっただろうな」
高さ3メートルはあろうトンネルの向こうは、真っ暗で何も見えない。
相当の深さであることは、ここからでも容易に想像がついた。
しかし、今は使われていない炭鉱など、ゾロにとってはこれっぽっちも興味がない。
「こうしちゃいられねェ。港はどっちだ?」
とりあえず海に向かえばいいんだから、山を背にして歩けばいいか。
そう思って、クルリと炭鉱に背中を向けた時だった。
「・・・!」
灯り一つ見えないトンネルの向こうから、バシンという微かな音が聞こえ、ゾロの足が止まる。
同時に、わずかだが血の匂いもした。
普通の人間ならば気づくことすらできないほどの音と匂い。
だが、ゾロの殺気を高めるには十分だった。
「・・・・・・・・・・・・」
誰かが流血するほど殴られている。
しかも、争うような音が聞こえないということは、無抵抗である証拠。
ただの喧嘩ではなさそうだ。
ゾロはトンネルの傍まで歩み寄ると、鉄格子の脇にある出入り口用の扉を押してみた。
すると、抵抗する気配もなくすんなりと開く。
やはり、この中に人間がいることは明らかだった。