第6章 真珠を量る女(ロー)
「5代目ホリヨシという男を探している。この島のどこかにいると聞いた」
すると、女主人は特に表情を変えることなく、あまり抑揚のない声で答えた。
「5代目ホリヨシ・・・ええ、よく知っているわ」
「そいつはどこにいる」
「彼に刺青を彫ってもらうつもり?」
グラスを持つローの腕を見て、何を思ったのだろうか。
口紅を引いた唇で煙草を咥えながら、静かな瞳でそこに彫られたタトゥーを見つめる。
「最高の彫り師だと聞いた・・・どうしても“完璧”に彫ってもらわなくちゃならねェタトゥーがある」
「そうね・・・ホリヨシは“伝説”の彫り師。でも、どうかしら・・・貴方が思っているのとは少し違うわよ」
「どういう意味だ・・・?」
「それは会ってみれば分かる・・・“会えるなら”ね」
「・・・?」
女主人は紙製のコースターの裏に簡単な地図を書き始めた。
その上には29番GRとある。
「ここに両替商があるわ。海賊達が、奪ってきたお宝をお金に替える場所」
「・・・彫り師が両替屋にいるとでも言いたいのか?」
「いいえ、そこにいるのはクレイオという若い女の子。そうね、貴方と同じくらいの年齢だから、行けばすぐに分かると思う」
「その女がどうした」
「もし貴方が彼女に気に入られたら、ホリヨシのところまで案内してもらえる」
逆に気に入られなければ、ローは一生、ホリヨシに会うことはできない。
「女を仲介人にしろというのか。随分と人嫌いのようだな、ホリヨシという野郎は・・・」
「人嫌い・・・? それは、ものの見方によるわ」
なぜ、ホリヨシが“伝説の彫り師”なのか。
それは本人に会ってみれば分かること。