第6章 真珠を量る女(ロー)
「お前はこの島で一番の情報通なんだろ」
「・・・・・・・・・・・・」
女店主は煙草の煙を長く吐き出すと、カウンターに頬杖をついてローを見つめた。
「私のことをそうだと思うなら、貴方も相当の情報通だと思うけど?」
「この島は初めてだからお前の助けがいる・・・避けて通れるなら、ここには来たくなかったぐらいだからな」
「へぇ・・・」
海賊が“新世界”へ入るためには深海1万メートルにある魚人島を通らなければならない。
その準備をする場であるこの島は、聖地マリージョアの正規ルートを通れない海賊にとって避けては通れない場所。
だからこそ海軍本部がそばに設置され、常に彼らの監視下にある。
しかし、ローが“ここに来たくなかった”と語ったのには、それとは別の理由があった。
“彼”の息がかかるこの島に近寄らずに済むのなら、どんなに危険でも別のルートを選んでいただろう。
「・・・面白い子。いったい何が貴方をこの島に“導いた”のかしらね」
「余計な詮索はするな」
「そんな怖い顔をしないで、ゆっくりしていって。ほら、そこの白熊ちゃんも」
いきなり声をかけられたべポは、“ヒッ”と小さく声を上げながらローの後ろに隠れた。
それを見て、“あら、かわいい”と微笑む。
「情報料はいくらだ?」
カウンターチェアに座りながら尋ねると、女店主は空のグラスをローの目の前に置いた。
「それは、トラファルガーちゃんの質問次第」
相手は億越えのルーキーと知っていながらあくまで余裕を崩さない。
1杯の酒に30万ベリーを請求するような女だ、情報料も相当の額だろう。
シャチが青ざめながらローのトレーナーの裾を引っ張った。
「船長・・・おれら、そんなに金ないっすよ」
「・・・・・・・・・・・」
だが、ローは仲間の心配をよそに、空のグラスを手に取ると、まるで高級なブランデーが入っているかのように揺らしながら口を開いた。