第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
「あれは“月の道”といって・・・一緒にこれを見た男女は結ばれるって言い伝えがあるんだよ」
「ふーん・・・で、なんでそれがごめんなさいに繋がるんだ?」
「だって・・・こんな醜い婆さんなんかと見たくは無かったでしょう? たとえ迷信だとしても、結ばれると言われたら嫌な気持ちにさせてしまうのは分かってるよ」
「・・・・・・・・・・・・」
嫌なことを聞いてしまって、せっかくの綺麗な景色が幻滅してしまったかもしれない。
隣で黙りこくっているルフィを恐る恐る見たクレイオは、予想もしていなかった海賊の姿に思わず噴き出した。
「お前・・・バカだなァ・・・」
ルフィは鼻くそをほじりながら、何を言っているんだ? とばかりに顔をしかめている。
「綺麗な景色じゃねェか。一人で見るより、二人で見る方がずっといい」
「そうだけど・・・」
「それに、もしこうして一緒に見たことでおれとお前がどうにかなるんだったら、それはそれで面白いじゃねェか!」
ヨッと木の枝に腰掛けると、クレイオも隣に座るようにポンポンと叩く。
ルフィにとっては年齢も、容姿も関係ないのかもしれない。
「海賊は自由だからな!」
そう言って、笑う。
「・・・・・・・・・・・・」
そんなルフィを見ていると、自分がとても小さな存在に思えてきた。
容姿や年齢を気にして閉じこもっているなんて、本当はとてもバカげたことなのかもしれない。
自分も隣に座ると、夜の海を照らす月がいっそう美しく輝く。
しばらくそれを見つめているうちに、自然と口を開いていた。
「ルフィ・・・私はずっと、なんで生まれてきてしまったのだろうと思っていたのよ」
「そうなのか?」
「こんな顔に生まれて、人に気味悪がられて、どうして私は“醜女”として生まれてきたのだろうって、ずっと考えながら生きてきた」
それは、月の世界へと導くような柔らかくて美しい光に、少しだけ背中を後押しされたのかもしれない。
クレイオは自らの人生を振り返るように語り始めた。