第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
“月夜にふたこぶ山の頂上から一緒に海を見下ろして、もし光の道を見ることができたら、その二人は結ばれるんですって”
「ただ、なんとなく来てみたかっただけよ」
もし、その言い伝えが本当で、ルフィと一緒に“光の道”を見てしまったら・・・
この醜い老婆と結ばれる、そんな可哀想な運命に彼を巻き込んでしまう。
そうなったら本当に申し訳ないから・・・
ただこうしてここに連れてきてもらえただけで満足。
クレイオが何も言わず、海の方を見ないように視線を落とした、その時だった。
「おい、クレイオ! 見ろよ!!」
ルフィがクレイオの手を握る。
「海に真っ白な光の道ができてるぞ!!」
不安も、迷いも、全てを吹き飛ばす、ルフィの声。
見たいものがあれば見ればいい、生きたいように生きればいい。
誰もそれを咎める者などいないのだから。
「綺麗だな・・・! おい、なんで下を向いてるんだよ、クレイオ!」
どんなに醜い生き物だろうと、美しいものに憧れる気持ちはある。
それを否定してはいけない。
他人だろうと、自分自身だろうと。
ルフィに誘われるまま顔を上げた、クレイオの瞳に飛び込んできたもの、それは・・・
満月の夜にだけ見ることができる“月の道”───
月光が静かな海面に映り、幻想的な一筋の線を描く。
漆黒のキャンバスの上に現れた真っ白な道は、どこから見ても真っ直ぐと自分達に向かって伸び、“さあ、二人で手を取り合って歩みなさい”と語りかけてくるようだった。
「もしかしてお前、これを見たかったのか?」
「・・・・・・ごめんなさい・・・」
「どうして謝るんだよ、変な奴だな」
足元が不安定な木の枝。
ルフィはしっかりとクレイオを抱き、落ちないように支えてくれている。
その優しさが余計に苦しかった。