第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
「よし! この距離なら一発でいける。クレイオ、おれにしがみつけ」
「え・・・?」
「ちょっと両手が塞がっちまうから、最初だけ自分の力でつかまっててくれよ」
そう言うとルフィは両腕を左右に伸ばし、数メートル先にそれぞれ建っている鉄塔を掴んだ。
いったい、何が始まるというのだろう。
いくら近いといっても、ふたこぶ山までは随分と距離がある。
「ギア・セカンド」
ピーンッと張った両腕に、腰を低く落として力をためているルフィの姿には、嫌な予感しかしない。
それに、なぜか彼の四肢からは蒸気のような湯気がたっていた。
しかし、それでも彼を信じるしかない。
クレイオが顔を寄せるようにして首に手を回すと、ルフィは楽しそうに笑った。
「見てろ、すっげェぞ!」
ルフィはいくつもの奇跡を簡単に起こしてしまう。
恐ろしくはあったけれど、それ以上に彼を信じる気持ちの方が強かった。
「ゴムゴムのォ~! JETロケットォォ!!!」
物凄い風圧、直後に押し寄せる無重力状態。
最初は恐怖のあまり、意識を失いそうになった。
だが、ふと自分の身体を力強い腕が支えてくれていることに気が付き、ゆっくりと目を開ける。