第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
夜の風とは、こんなにも透明度が高いのか。
何キロ先までも見渡せるようだ。
木から木へ。
木から屋根へ。
屋根から屋根へ。
ルフィの腕はどこまでも伸び、
ルフィの手はどんなものでも掴み、
ルフィの足はどこへでも辿り着く。
それはまるで、彼が夢を掴むまでの過程のようで、頭上に広がる星空はそんなルフィを優しく見守っているようだった。
「大丈夫か?」
途中、民家の屋根の上で小休止すると、ルフィがクレイオの顔を覗き込んできた。
ただ抱えられているだけといっても、老婆にとってルフィの動きはとても激しい。
ちょっとの振動でも体中の関節がきしみ、息は絶え絶えとなっていた。
「だ・・・大丈夫」
「悪い・・・おれ、加減がよく分からねェから無理させてるのか?」
「そんなことはないよ、ルフィ。夜風がとても気持ちいい」
そう言って笑って見せると、ルフィも安心したように笑みを浮かべる。
「ふたこぶ山ってのはどっちだ?」
「あそこに頂上が二つに分かれている山があるのが分かるかい?」
「・・・ああ、あのラクダみてェな山!」
かろうじて街明かりでボウッと浮かび上がっているだけの山なのに、ルフィにはしっかりとその形が見えているようだった。
そしてキョロキョロと辺りを見回して何かを確かめると、クレイオに向かってニッと白い歯を見せる。