第1章 オムライス
シドのことで
少し落ち込んでいたために、
ここまで静かに3人のやり取りを
見つめていたアヤセだったが、
主人のそんな言葉に口を開く。
「あの、もしかしてそのトマトも
知ってたりしますか!?」
シドに喜んで欲しい、
そんな想いからだった。
「ああ、もちろんだ!
あの頃アイツが気に入って使っていた
品種があってな。
今はだいぶ見なくなったが、
まだ作っている農家を知ってるから、
そうだな、3日後に届けるよ。
ハワード邸でいいのかい?」
「あ、いや、王宮に。」
「王宮?
あっもしかしてお嬢さんは
プリンセスかい!?」
「あ、はい、実は…。」
「これは失礼しました。
まさか直接こんな店にまで
来てもらえるとは!」
「気にしないでください。
私がそのオムライスの
作り方を知りたいと
わがままを言ったものですから…」
「そうか!
プリンセスの要望とあったら
俄然張り切ってしまうな!」
主人は嬉しそうに笑った。