第3章 もっと…
シドが隠れ家の扉の鍵を開ける。
「入れよ。」
「ありがとう。」
シドに促され、先に隠れ家に入る。
すると……
「きゃっ!」
シドに後ろから抱き締められた。
「シド…?」
「悪かったな…」
抱き締める腕に力がこもる。
「あ…うん…」
「仕事がなかなかうまく行かなくて
イライラしてた。」
「もう…大丈夫なの?」
「ああ。」
「そう…それならよかった…」
アヤセはそう言うと
自身に回されたシドの腕に両手を置く。
「私もごめんね…
シドのこと考えているつもりが、
結局自分のしたいこと優先させてた…」
「…じゃあこれでおあいこだな。」
「うん…」
シドの腕に頬を擦り寄せる。
「あ…」
シドが
アヤセを自分の方に向かせた。
そして…
「んっ…」
唇を重ねる…
甘く唇を噛まれ、
アヤセの内側が溶けてゆく…
(気持ちいい…)
さほど深くはないが、
お互いの唇を確かめ合うようなキス。
「ぅん…はぁ…ん…」
いつもしているような
キスではあるのに、
今しているキスはとても心地いい。
いつまでも、いつまでも
こうしていたいような、
そんな心地がする。
(きっと…
ケンカという訳ではないけれど、
すれ違っていたのが
元に戻ったからかな…
ずっと…こうしていたい…)
そんなことを思いながら
シドの甘く優しいキスを受け止める。
しばらくして、
ちゅ…と音がして唇が離れた。
しかし…
アヤセはシドの襟を両手で掴むと、
切なげな表情で口を開く。
「もっと……」
シドはその姿に
ドキリとした表情を浮かべると、
背中に回していた両手のうちの片手を
アヤセの後頭部に添えて、
今度は強く唇を重ねた。