第14章 アップルパイよりも甘く ♥︎ 〜孤爪研磨〜
急に視界が揺れて、唇に柔らかいものが触れる。
唇を割って入ってきたのは、とろりとした感触。
それが研磨くんのものだと分かるのは、口の中のリンゴジャムを絡め取られた後だった。
『…ッ、は…け、研磨くん……!?』
「んー、あま…」
驚きを隠せないあたしに、研磨くんはマイペースに振る舞う。
『ちょ…あの…』
「結木、もっと」
もっと、ちょうだい。
そう言われて、床に押し倒されて。
再び押し付けられる、研磨くんの唇。
舌の裏を優しく舐めあげられ、軽く舌先を吸い上げられる。
ぴりぴりとした感覚が頭の中で渦巻いて、今自分が何をしているのか分からなくなってくる。
とっくに口の中は、リンゴジャムの味なんかしなくなっていた。
『ふ…はふ…』
「もぅ、おしまい…?おれ、まだ欲しい」
そう言う研磨くんは、少し楽しそうにリンゴジャムを掬ったスプーンをあたしの口に運んできた。
口に含めばどうなるか、もう分かったはずなのに、口元に運ばれるスプーンを素直に受け入れてしまう。
嬉しそうに目を細めて、あたしにキスをする研磨くんの目は、まるで猫が獲物を捕まえて満足しているような、そんな目だった。