第14章 アップルパイよりも甘く ♥︎ 〜孤爪研磨〜
「……結木、これは……?」
『…リンゴジャムですね』
結局、正式なアップルパイはもちろん作れず、餃子の皮のなんちゃってアップルパイも作れず。
あたしが研磨くんに差し出したのは、唯一作れたリンゴジャム……だけ。
『アップルパイには程遠いけど…』
とりあえずリンゴです。
他に変なものは入れてません。決して。
そんなことを呟いていると、耐えきれなくなったのか、研磨くんが吹き出した。
「く…はは…!結木、ほんと…いいね…っ、ふふ…」
そんな風に笑う研磨くんを見たことなかったあたしは、ぽかんと彼を見つめるしかできなかった。
「はー…おもしろ…」
ひとしきり笑って気が済んだのか、研磨くんは少し落ち着いてから、あたしの方を見た。
「ね、結木…これ、食べさせてくれるんだよね?」
これ、と研磨くんが指さしたのは、あたしが差し出したリンゴジャム的なもの。
『…それしかないけど…それで良ければ』
「じゃあ…」
ん、と突き立てられたスプーン。
リンゴジャムの匂いがあたしの鼻をくすぐる。
『…へ?』
「ほら、あーん」
無理やり押し込まれたスプーン。
ふわりと広がったリンゴの味。
ただただびっくして、リンゴジャムを頬張ったまま固まるあたしに、研磨くんは呟いた。
「…結木は分かりやすいよ、攻略本とかなくても大丈夫なくらい」