白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
伸びてくる手が
頬に近付く
"タスケテ、ツライ"
そう言ってこの手を握れば
きっとクロは…
過る甘い期待
でもそれを追い越す
胸の傷の痛み
『…触らないで…』
「え?姫凪ちゃん?」
もしかしたらクロもトモノリと
同じで…私の事なんて
何とも思ってなくて
騙そうとしてるだけ、かも
じゃなきゃ…彼女が居るのに
優しくなんかしてくれる訳ない
「おい、アイツになにかされた?
怖い思いした?
俺で良かったら聞くから話して?」
甘い言葉に揺れる心と
傷に震える心が
身体の奥で暴れてる
「姫凪ちゃん
顔色悪い。
あ、二人きり嫌なんですかァ?
ならまた研磨の家でさ!
な!それなら…」
いつも通りの優しい笑顔に
フラリと動いた足が
「姫凪!」
『あ…トモノリ…』
トモノリの声で止められる
追って来たの?
なんで?
まだ、何かする気?
嫌だ…来ないでよ…
離れようとした私の背中を
「ごめん、遅れた!
怒んないで?」
トモノリがギュッと抱き締める