白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
「まぁな。
オンナ居るのに手ぇ出してくるなら
アイツも孤爪と賭けてるとかな!
彼氏持ちのオンナ落とせたら
一万円、的な?」
信じられないよ、誰も。
男の人なんか…大嫌い。
トモノリが嘲笑う声に足元が
ふらついて逃げようとした身体が
棚にぶつかり商品が落ちる
「え?姫凪…!?」
音で振り返ったトモノリが
青い顔をして私を見てる
『…あの…ゴメンナサイ…
今日、ヤッパリ…行けません。
別れ…て、下さい』
必死に声を振り絞り
フラつく身体を引き摺って
店を出る
朝早くから作ったお弁当が
やけに指を痺れさせる
泣いちゃ駄目だ
泣くもんか…!
好きなんて言われて
騙された私が悪いんだから…
誰も頼らない
自分で立ち直らなきゃ…
必死に落ちそうな涙に
言い聞かせてると
「姫凪…ちゃん?」
今一番聞きたくない人の声
『クロ…オさん…』
振り返っちゃ駄目だと
頭が伝達を送る前に
身体が動いて
目の中にいつもの優しい笑顔が映る
「どうした?
なんかあったか?」
『なんにも…』
「いや、それはウソ
泣きそうな顔してる」