第3章 消せない昔、消えない今（前）

慌てて顔を上げると

「…まだ怖い…か？
まぁ、初めてだもんな…！
ガッツいてゴメン！
最近黒尾と仲良いからさ
焦ったんかなー…
ヤキモチ情けねえ…」

眉毛を下げて
ゴメンと手を合わせる先輩

不意に出て来たクロの名前で
膨れ上がる罪悪感

別に何かしたわけでも
された訳でもないけど

『あ、先輩は悪くないです！
私が…悪い…ので…』

先輩は私を信じてるのに
なにフラフラしてるの…バカ。

「俺がお前をその気にさせられないのが
ダサいんだって。
だから姫凪は謝んなくて良いよ」

『…でも…』

俯く私を抱き締めて

「そんな顔されると
堪んなくなるから…
そうだなー…呼び方。
チャント、トモノリって呼んで？
それで今日はチャラ！な？」

また重ねて来る唇

「トモノリって呼んで
キスして来いよ
それで満たされた事にするから」

甘い声が耳で暴れて
心が跳ねる

『トモノリ…』

そのまま唇を重ねて
ギュッと身体にしがみつく
先輩の体温に包まれて
髪に息があたって擽ったい事に
ドキドキする