第2章 最初のいっぽ
名前はぼんやりと真っ白な天井を見ていた。
覚えのある薬品の匂いに、ここが病院であることはすぐに分かった。
しかし、躰が動かない。
頭も動かない。
意識が朦朧とする中で、男性の話し声が耳に入ってきた。
恐らくドアの向こう、廊下で話しているのだろう。
銀「だぁから!なんべん言わせんだ!あれは俺じゃねぇって!」
土「お前ェじゃなかったら誰があんなことすんだよ!」
銀「知らねーモンは知らねーんだよ!俺が来た時にはあーなってたの!!アンダスタン?」
沖「まーまー二人共落ち着いてくだせぇ。これじゃ捜査にならねぇでさァ」
(捜査?…警察?)
銀土「・・・・・・」
静まり返ったのは束の間。
沖「結局苗字邸の亭主も殺されてたんでィ。事情聴取できんのは旦那とあの娘だけなんですぜィ?ちったぁ協力してくだせェよ、旦那ァ」
(亭主が死んだ?)
沖「土方さんも、それじゃタダの拷問ですぜ?」
二人は沖田の正論にぐうの音も出ないようだ。
『亭主?お父様?お父様が殺された…?』
土方は舌打ちをして煙草を吸殻へとねじ込んだ。
土「あの日、何の依頼だったんだ?」
銀時は面倒くさそうに耳をほじる。
銀「屋根裏のネズミ捕りだよ。帰りの途中で貰った報酬が聞いてたのと少なかったから、講義に戻った!そしたらあのザマだ」
土「天井裏を這いずり回って異変に気付かなかったのかよ」
銀「はぁ~」
聞こえるように大きなため息をつく銀時に、土方の眉間のシワがまた一つ深くなった。
銀「ネズミどころか、ゴキブリ一匹いなかった」
土「・・・?」
「失礼します。そろそろ検診の時間なので、ドアを開けさせていただきたいんですけど…」
2人の若い看護師と中年の白衣を着た医者が申し訳なさそう立っていた。
ガラッ
無遠慮に開かれる扉に名前が目を動かした。
「あっ!先生!!苗字さん目を覚ましています!」
看護師の声に先程まで話していた銀時達もゾロゾロとベッドに駆け寄ってくる。
『・・・んだ?』
一同「???」
『私…死ねなかったんだ』
また、生かされてしまったんだ。