第1章 始まりのはじまり
スパァァァァァン!!!!!
屋敷の最深部の六畳間。
東西に位置する襖が同時に開かれた。
銀「―――――ッ!?」
土「―――――ッ!!??」
正面に映った憎らしい顔にお互いが絶句する。
土「なんでてめェがここにいんだ!」
銀「そのままそっくりおめぇに返してやるよ!ニコチン野郎!」
しかし喧嘩も長くは続かなかった。
丸く型どられた窓のある壁に背中を預けて座る人影が見たからだ。
天窓から差し込む月明かりに照らされて、それが女だと分かる。
今まで二人が見てきた死体とは明らかに違うソレに、同時に駆け寄った。
しかし、手を伸ばすことを躊躇ったのも同時だった。
乱れた赤い着物から力なく伸びる四肢。
色素が抜け駆けた薄墨色の長い癖のある髪。
焦点の合わない瞳は、月明かりを反射し暗紫色に光っていた。
銀時は一度躊躇った感情を握りつぶしてから女の肩を掴んで揺さぶった。
銀「お、おい!生きてるか!?」
土方は無線に力いっぱい声を張り上げる。
土「救護班!担架をこっちに回せ!!」
『・・・・・・・』
二人の声に僅かに首を動かす。
そして未だ焦点の合わない瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
銀「大丈夫だ!生きてる!!」
土「せ、生存者だ!!」
しかし、女はそのまま意識を手放した。