第3章 真選組のしごと(前編)
『あ、あの…えっと……』
土「俺はいつだってココにいる。今名前が胸張って俺の側に居られないなら…悔しいなら努力しろ。俺はずっとココにいるから」
(そうだ。私が欲しかった言葉…)
『ありがとう、ございます』
名前はそっと土方の胸を離して涙を拭った。
『私、頑張ります!』
あぁ。と短く言って名前の頭をくしゃっと撫でた。
『遅くにすみませんでした!失礼します!!』
少し顔を赤らめた名前は、ペコリとお辞儀をしてパタパタと自室へ戻っていった。
姿が見えなくなるまで見送った土方は、何かを吐き出すように深いため息をついた。
そして―。
土「おい。山崎、コレ持ってけ」
隣の部屋の襖が開くと、申し訳なさそうに山崎が姿を現す。
山「お邪魔しちゃってすみませんでした」
土「名前も気付いてただろうさ。だから急に部屋に戻ったんだろう」
山「だから邪魔しちゃってすみませんって言ってんのに…」
土方は立ち上がり書類を手渡した。
山「余計なお世話かも知れないですけど、ちゃんと気持ち伝えないんですか?」
机に向かって座り直し、灰皿に置かれた煙草を拾い上げて煙を吸い込む。
土「話が見えねぇな」
山「副長。モタモタしてるとかっ去られますよ?」
思わず浮かんだ銀髪の野郎の顔を振り払う。
土「…そうだな。アイツだけには渡したくねぇな」
山「・・・・・」
山崎はクルリと振り返り廊下に出る。
山(じゃぁ、俺ならいいんですか?)
歪んだ口元を見られないように歩き出す。
山(なんてね。そんなこと言えならいいのになぁ~)
サァァァ―。
冷たい風が夜空に舞い上がった。