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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第13章 鬼と豆まき《弐》



「行くなとは言わねぇが連携を取れつってんだ。あの時透を飲み込んだ程の血鬼術だぞ」

「時透は竹刀しか持っていなかった」

「うむ! 今なら我らには日輪刀がある!」

「連携と言うなら、」

「俺と冨岡とで取る! 問題はない!」

「さっきまで単独行動取ろうとしてた奴らが、こういう時だけ帳尻合わせやがって…」


 淡々と静かに告げる義勇に、声を張り轟かせる杏寿郎。
 正に水と炎、対象的な二人の意気投合さに天元は呆れ半分、感心半分に溜息をついた。


(まぁ、こいつら二人なら文句もねぇけど)


 相反する二人だが実力は確かなものだ。


「じゃあ中のことはお前ら二人に任せた。何が起こるかわからねぇから、外から俺と悲鳴嶼さん達とで見張る」

「怪我人は私が診ます。見つけ次第、すぐに救出して下さい」

「胡蝶」


 柱の最後の一人、しのぶが合流し、この場に柱が全員揃った。


「わ、私も行きます! 無一郎くん達を助けなくちゃ…!」

「なら俺も行く。甘露寺を二人には任せられない」

「いや大丈夫だ! 甘露寺と伊黒は待機をしていてくれ!」

「この先は血鬼術の中。すなわち相手の領域に踏み込むことになる」


 だからこそ最小限に最大の結果を出せる者で行くのが最善の道。
 二人の柱ならそれができると周りも見込んだのだろう。珍しくも反論しない小芭内から、杏寿郎と義勇は実弥と無一郎の日輪刀を受け取った。


「中には柱が二人いる。致命傷を負っているとも思えない。合流次第、彩千代を連れ出す」

「お、お願いね、冨岡さん。絶対、蛍ちゃんを連れ帰ってね…っ」

「承知」

「案ずるな、必ず俺達で連れ帰ると約束しよう」

「師範…」


 おろおろと不安な表情を見せる蜜璃の肩を、杏寿郎の手が優しく叩く。
 揺るがない強い意志の目と笑顔で告げる彼に、桜餅色の頭は深く頷いた。


「では行こう!」


 直径5m程の大きな沼のような影。
 その縁に立つ杏寿郎と義勇が、先の見えない一歩を踏み出す。





 ──ボコッ





 足が、影へと触れる直前だった。


「む…!?」

「これは…」


 波紋一つ広げなかった静かな影が、ぼこりと大きく波打ったのは。











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