第13章 鬼と豆まき《弐》
「悲鳴嶼さん達の分も!」
「よく全部持ってこれたな。流石、甘露寺だわ」
「うむ、かたじけない…」
行冥や天元の得物は、杏寿郎のように一般的な刀の形状はしていない。
幅の広い大きな斧状の刀身に、棘の付いた大きな鉄球が鎖で繋がれた行冥の日輪刀は、柱の中で随一の重さを持つ。
また大振りの巨大な包丁のような二本の双刀は、持ち主である天元でしか扱えない爆ぜるような破壊力を持つ日輪刀だ。
その二刀も一人で抱えて持ってきたというのだから、蜜璃の怪力は伊達ではない。
それでもやはり少女の手には余ったのか、荒い息をつきながら赤い顔のまま地面に座り込んだ。
「大丈夫か、甘露寺」
「私、は…それより冨岡さん達にも…っ」
「ああ。冨岡!」
後に続き現れたのは、共に行動していた蛇柱の伊黒小芭内。
その手には自身の日輪刀の他に、二本の刀を所持していた。
一つは義勇の日輪刀。
投げて寄越すそれに、義勇の片手がはしりと鞘を握る。
「不死川は?」
「まだ中だ」
「時間がかかり過ぎではないのか」
もう一つの刀は実弥のもの。
厳しい表情を見せる小芭内に、応えたのは義勇ではなかった。
「うむ。事態は一刻を争うものだ!」
間に入る杏寿郎の声は、いつもの闊達に通るものに変わっていた。
鞘をベルトに挟み、すらりと長い刀身を抜く。
「では参る!」
「ちょっと待ったァ!」
一瞬の躊躇もない。
抜刀した途端、影鬼の中に身を投じようとした杏寿郎を既で天元が止める。
「何してんのお前!? さっき鬼娘に耐えろって言ったばかりだろ!」
「ああ、突破口が見つかるまでは! その突破口が今見つかった。この日輪刀で蛍や時透達を助ける!」
「だからって一人で早まるな突っ込んでいくな! 気持ちはわかるが──」
「……」
「だから待てつってんだろーがァ!」
「!?」
杏寿郎と天元のやり取りを視界の隅にも入れていなかった義勇が、タンと影鬼の縁を跳ぶ。
が、その前に天元の手が義勇の腕を捕まえた。
「お前も何地味に飛び込もうとしてんだ話聞いてたか!?」
「……」
「なんだその心底驚いた顔は」
「…止められるとは思っていなかった…」
「派手に見逃さねぇわ」