第11章 鬼さん、こちら。✔
炭治郎が鬼殺隊の剣士となって間もない頃。
二度目の任務の為に赴いたのが大都会、浅草。
其処で鬼の始祖である鬼舞辻無惨と偶然の出会いを果たしたが、すぐさま姿を暗まされてしまった。
その経過で出会った、一組の鬼の男女。
女は珠世(たまよ)、青年は愈史郎(ゆしろう)と名乗った。
女は鬼であると同時に医者でもあると言い、その場で無惨に鬼にされた人を沈静化させた。
長い時を生き続けているらしい珠世は、無惨の支配から逃れた鬼だと言う。
そして鬼を人に戻す薬を研究し、探し続けている者だとも告げた。
そこで禰豆子を人に戻したい炭治郎と利害が一致し、珠世はとある約束を交した。
より沢山の鬼の血を調べることで、鬼を人に戻す薬への道は見えてくる。
その為に、より無惨の血が濃い鬼の血を採取してきて欲しい、というものだ。
「無惨の血が濃い鬼ということは、より強い力を持つ鬼。だから俺は十二鬼月を倒すと同時に、その血を手に入れないといけない」
「…その珠世って鬼を信頼できる理由は?」
「話し合いをしていた時に、無惨の仕向けた鬼に襲われたんだ。そこで珠世さんも身を挺して戦ってくれた」
成程。
鬼だから鬼殺隊に協力を仰ぐこともできず、単体で動いて尚且つ禰豆子という特殊な鬼を連れた炭治郎に目を止めたんだろう。
そして一番の理由は、きっと炭治郎だったからだろうな。
炭治郎なら、相手が鬼であっても真っ直ぐに向き合ってくれるだろうから。
「珠世さんは自ら自分の体を弄って、人の血を飲むことだけで正気を保つ術を身に付けていた」
「…え?」
「俺も思ったんだ。蛍のことを義勇さんから聞いた時に。"珠世さんと同じだ"って」
「……」
「でも珠世さんや愈史郎さんみたいに、蛍は自分の体を弄ってはいない。なのに同じように正気を保てている。そして、異能の力だって使えると聞いた。それって、蛍が特別な鬼だからじゃないかな」
私が…?
「…それはないよ、炭治郎」
一瞬浮いた疑問は、すぐに打ち消す。
「禰豆子と出会ってわかった。"特別"って言葉は、あの子の為にある。その珠世さんも言わなかった? 禰豆子は稀に見る鬼だって」
「……」
無言は肯定と同じこと。
そして炭治郎の顔は、良くも悪くも嘘が付けない。