第37章 遊郭へ
「ああ、俺達は色々あって宇髄さんの任務に同行して此処に」
「待って俺"達"って言った?」
ということは炭治郎の他にも鬼殺隊士が此処にいるのか。
「色々」とざっくりまとめられた内容も気になるが、今着目すべき点ではない。
何より炭治郎の表情そのものが物語っていた。
「それより早く禰󠄀豆子を見つけないと…!」
その焦燥した顔が、禰󠄀豆子の不在を突き付けてくる。
ガァンッ!!
「「!!」」
炭治郎の不安を具現化するように、突如夜空に響き渡る撃音。
顔を上げたのは二人同時だったが、駆け出そうとした炭治郎の体ががくんと力を失くし落ちる。
「炭治郎っ」
「禰󠄀豆子…っきっと禰󠄀豆子はあそこにいる…!」
「待って、その怪我は無視していいものじゃないから…っ誰にやられたのっ?」
「鬼、だ。上弦の。瞳には陸の字が刻まれていた…っ」
やはりこの夜の騒ぎは上弦である堕姫と鬼殺隊が対峙したものだったのだ。
屋根に片手をつく炭治郎を支えながら、蛍はきゅっと唇を結び再度撃音がした街並みへと目を向けた。
いずれは来ることだ。
相手は人を喰らう悪鬼。
その悪行を鬼殺隊が黙って見ているはずがない。
「っ炭治郎掴まって」
「え? わ…っ!」
「刀は落とさないでね」
激しい戦闘を繰り広げたのだろう、満身創痍な炭治郎の体を蛍は軽々と背に抱えた。
天元には出会えていないが、向かうべき場所はわかった。
白梅の時に使用していた小さな着物では、成人の肉体へと変わった蛍の肌は隠しきれない。
その剥き出しの腕に戸惑いながらも掴まる炭治郎を乗せたまま、蛍は助走もつけずに走り出した。