第11章 鬼さん、こちら。✔
不毛にしたい訳じゃない。
自然と頭を縦に振れば、強いアオイの笑顔が優しく染まる。
「身分違いでも告げてきたってことは、覚悟を持って伝えてきてるってことだから。大丈夫よ」
そう、なのかな…。
「……」
って待って。
「あの。隠の話だからね?」
「わかってるって」
なんか途中から、隠から鬼に変換されてた気が…。
…バレてたかな、これは。
「じゃあね、禰豆子。また来るから」
「ムゥ!」
「またねぇ蛍ちゃん」
「うん。善逸も」
禰豆子を善逸に預けて、蝶屋敷を後にする。
外はもう真っ暗。
私や禰豆子はここからが活動時間だけど、人である善逸達は眠りにつく時間。
現に伊之助はもうすっかり夢の中だし。
お昼あれだけしっかり体を動かしたら、ぐっすり眠れるよね。
だけど善逸はまだまだ眠る気配がない。
多分これから、禰豆子の為に夜のお散歩にでもつき合うんだろうな…禰豆子は鬼だから体力は沢山あるだろうし。
でもそこに人間がついていくのは大変だ。
それもお昼あんなに訓練で体を痛め付けた後に。
「よぉしっ今から何する? 禰豆子ちゃんっ」
「ム!」
だけど声を弾ませて誘う善逸に、その疲れは見当たらない。
それ以上に禰豆子と過ごすのが堪らなく嬉しいって顔してる。
…もし禰豆子が善逸に好意を抱いたら、やっぱり私は応援するんだろうな。
善逸の女の子好きは少し心配だけど、禰豆子にそこまでできる男の子なら。
やっぱり、不毛じゃない。