第24章 びゐどろの獣✔
「まさかお前、血だけじゃなく肉体まで喰わせてんじゃねェだろうなァ」
「それはない。俺も柱としての立場は弁えている。そもそも蛍自身が口にするのを拒否するだろう。彼女は人喰い鬼ではないんだ」
「じゃあなんだってんだ」
「ううむ…致し方ない」
一向に諦めの姿勢を見せない実弥に、先に折れたのは杏寿郎だった。
実弥も蛍へ血液提供を名乗り出た柱の一人だ。
血液以外のもので事足りるなら、知っておきたいというのは純粋な欲だろう。
それでも流石に夜の営みまでは話せない。
「人間の持つ体液は何も血や汗だけではないだろう? それが答えだ」
「それ以外の体液だァ?」
「それ以上の詳細は何があっても伝えられない。さて、蛍達を見失う前に追い付かなければな!」
これでこの話は終わりだと言わんばかりに、完全に実弥から顔を背けた杏寿郎が足早に蛍達を追う。
(血と汗以外の体液…体液?)
一人、杏寿郎の言葉を脳内で復唱していた実弥は、はたと何かに気付いたように顔を上げた。
血と汗以外に、分泌される体液。
そんなものは限られている。
「煉獄お前…まさか」
「その話は終わりだ不死川! それよりも蛍と千寿郎を追」
「テメェの排泄物食わせてんのか…」
「違うッ!!! 断じてッッ!!!!」
心底ドン引く顔で告げる実弥に、どっせいを超える程の声量で杏寿郎が間髪入れず否定したのは言うまでもない。